ついに登場、Power10ファミリーの第1弾はハイエンドの「Power E1080」 ~ハイブリッドクラウド、AI、セキュリティ向け機能でさまざまな革新

Power E1080の本体内部
Power E1080の本体内部

 

日本IBMはこのほど、Power10サーバーの最初のマシンとして、ハイエンドモデルのエンタープライズサーバー「IBM Power E1080」を発表しました。Power9サーバーの発表(2018年)から3年目の発表で、Powerサーバーの開発が予定どおり順調に進んでいることを物語っています。

Power10サーバーの特徴は、ハイブリッドクラウドやAIの今後の急速な普及を見越して、チップレベルからアーキテクチャを設計し直した点にあります。その結果、処理速度(マシンスループット)はPower9サーバーの1.5倍以上になりました。そしてこの高速化により、「さまざまな革新的な機能の新規追加が可能になった」とIBMでは強調しています。

Power E1080の主な特徴
Power E1080の主な特徴

 

その1つはAI向けの機能です。メモリをクラスタ構成にしてペタバイト級まで拡張可能にする「メモリインセプション」という新機能や、CPUのコアごとに4つのAI用処理エンジン(Matrix Math Accelerator)を追加しています。これにより推論の際の処理速度は、現行マシンのPower E980の約5倍に高速化したといいます。

さらに、機械学習やAIモデルを作成するためのオープンソースのライブラリ「ONNX(Open Neural Network Exchange)」をサポートし、ONNX対応の学習済みAIモデルであれば、コードの変更なしにx86サーバーからPower E1080へデプロイできるようにしました。

これらの新機能と拡張によって、Power E1080では、AI専用の特別なシステムを用意しなくても(GPUプロセッサなど)AI処理が行えるようになり、基幹システムを稼働させているすぐ隣の区画でAI処理を実行できます。このことは、AI処理をごく身近にする点で画期的で、日本IBMでは「データのある場所でAI処理が実行できる」とアピールしています。

Power E1080では、セキュリティ面でも大きな飛躍がなされています。ハイライトの1つは、「透過的なメモリ暗号化」という新機能で、アプリケーションを実行すると、CPUとメモリの間で自動的に暗号化を実行する機能です。つまり、CPUとメモリをつなぐメモリバスを監視して命令を読み取ろうとするようなハッキングや、メモリモジュールそのものを詐取するサイバー攻撃への有効な対抗手段になるというわけです。

またCPUのコアごとに、Power E980の4倍となる4つの暗号化エンジンを搭載しました。この搭載により、AESによる標準的な暗号化では、Power E980の2.5倍の高速処理を実現できます。さらに量子コンピュータを使った暗号解読アタックに対応可能となる「耐量子暗号化」と「完全準同型暗号化」機能も搭載しました。これは「将来への備え」ということです。

Power E1080の達成
Power E1080の達成

 

このほか販売面の施策として、Red Hat OpenShiftとRed Hat Linuxの分単位の従量課金や、ハイブリッドクラウド環境全体で共通の従量課金方式を採用する計画です。これにより、必要な時に必要なリソースだけ利用する形態が一段と進み、ハイブリッドクラウドの採用がさらに進展するものと思われます。

また、マシンの購入者には、一定以上の電気使用量に対して、環境省「温室効果ガス排出算定・報告・公表制度」に基づく「SDGs割引」を適用します。Power E1080ではチップレベルから環境やSDGsに配慮した設計・製造がなされていますが、販売面でもそれを推進する施策を展開しています。

Power10サーバーのエントリー機とスケールアウト・サーバーの出荷時期は、来年になるようです。日本IBMでは「近い将来」と説明しています。また、PowerサーバーのクラウドサービスであるPower Virtual Serverの提供開始時期は「近日中」とのことです。

Power E1080の外観
Power E1080の外観

[iS Technoport]

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