IBMは「経営スタディ・シリーズ」と題して、約20年前から世界のCEO（最高経営責任者）、CIO（最高情報技術責任者）、CFO（最高財務責任者）などを対象とした調査レポートを公開しています。
その最新レポートとして「CFO スタディ 2021」の日本語版（第21版）が発表になっています。
今回の調査によると、CFOが率いる経理財務部門は、従来の経理財務業務に加えて、企業戦略の策定と実行について企業価値を向上する意思決定の支援をCEOから強く求められていることが明らかになりました。
ただし実際は、従来の経理財務業務に時間を取られ、CFOが意思決定支援に費やす時間は全体の25％、分析とアクションは10％未満という結果です。
CFOは、企業のDXに影響力を行使できる特異な立場に立っています。具体的には、財務計画の設定、ビジネスケースの作成、それぞれの施策の価値評価、利益達成の追跡的な調査などを行います。そうした前提のうえで、企業全体のトランスフォーメーションにおいて自らが重要な役割を果たしていると回答したCFOは、調査回答者の4分の3近くに上りました。
CFOは企業のDXにおける自らの最重要責務は、予算管理と資金調達という財務関連の仕事であると認識しています。しかし実際には、CFOの責任範囲は予算と財務の枠にとどまらず、10人中4人の CFOが、あらゆる業務をデジタル化するという企業文化の醸成を任されている、と回答しています。
CFOが時代の要請や企業全体からの期待に応えるには、経理財務部門が組織にとって必要不可欠なパートナーになる必要があります。そのことは、組織全体の効果的な意思決定を支援することでもあります。
しかし経理財務担当者は、業務時間の半分近くを帳簿作業に費やしています。これは18年にわたる調査を通して一貫した傾向です。意思決定を支援するための分析や実務に割り当てられた時間は、全体の10％にも届いていないのです。ここから、戦略的な課題に取り組む時間の確保こそが、経理財務部門の課題であることが浮き彫りになっています。
戦略的に意思決定を支援するには、経理財務部門のリーダーがこれまでの考え方を改め、構造化された効率的な方法を取らねばならなりません。
同調査では、意思決定を効果的に支援するには、「企業戦略」「組織のアジリティー」「データ中心主義」「人財の再定義」「インテリジェント・ワークフロー」の5 つに焦点を絞るとよい、と指摘しています。
これら5つのファクターを組み合わせれば、経理財務部門の影響力を劇的に拡大し、効率的かつ効果的に成果を上げられるようになる、とレポートは指摘しています。そして、これらのファクターをうまく活用できているCFOは、収益に対する財務コストの割合を8％抑え、戦略の策定と実行の効果を3～4倍に伸ばしている、と調査結果を踏まえて述べています。
レポートでは、経理財務部門が意思決定を支援する上記5つのファクターの進捗状況を評価するため、「効率性」「スピード」「実行力」「正確性」という意思決定上の4つの側面に着目し、経理財務部門を類型化しています。
その結果、それぞれに長所と短所を備える以下の 4つのCFO像が浮かび上がっています。それは、「戦略的アドバイザー」「慎重な決定者」「アクション設計者」「限定的な関与者」というCFO像です。
世界的なパンデミックがもたらした課題と、その課題の規模や求められるスピードが、これら4つのタイプ間の差をさらに際立たせることになっているようです。
このなかで「戦略的アドバイザー」は、意思決定上の4つの側面ですべて高評価を示し、財務パフォーマンスと意思決定支援で効果を上げており、今後の求められるCFO像であると定義されています。
ちなみに世界のCFOにおける戦略的アドバイザーの割合は15％、日本のCFOにおける割合は21％で、日本のCFOのほうが世界に比べて戦略的アドバイザーの割合が高いという結果が出ています。
IBMは今回の調査結果をもとに、企業のCFOが戦略的アドバイザーとして意思決定を支援するため、以下の5つの行動指標を推奨しています。
・戦略に注力し、意思決定を支援する
・経理財務部門のアジャイル化を進める
・データを企業文化の中心に据える
・人財に投資する
・テクノロジーを活用し、インテリジェンスを強化する
そして、戦略的アドバイザーをはじめとする4つのCFOタイプが、これらの指標に対する考え方や取り組み、行動がどのように異なるかを詳述しています。
「経営層スタディ・シリーズ：CFO スタディ 2021」 日本語版
https://www.ibm.com/downloads/cas/A5BOMK39
［iS Technoport］
