従来、IBM iの開発拠点であるIBMロチェスターでは、マシン開発を行う際に「System Plan」と呼ぶエンジニアリング・モデルを利用し、開発の優先順位と資源の割り当てを決めていました。
しかし、シルバーレイクのような従来にない新しい技術を採用し、市場シェアの低いポジションから他社との激しい競争に打って出ようというマシンには、「System Plan」はうまくフィットしないことが明らかでした。
そこで、シルバーレイク・プロジェクトでは、米ピッツバーグ大学のトーマス・サーティ教授が開発した「階層分析法」(定性的な問題を定量的・客観的に評価するための手法)という手法を採用して、開発の目標と優先順位を決定することにしました。
その結果、シルバーレイクの開発目標と優先順位は、次のように定められています。
第1の目標は収入です。そして第2の目標はマーケット・シェア、第3はテクノロジー・リーダーシップです。
またこれとは別に、市場ごとの戦略を明確にするために、約300ある業種から100の業種にターゲットを絞り、そのランク付けを次の2つの基準を基に決めることにしました。
基準の1つは、市場の成長性です。もう1つは、シルバーレイク自体の競争力。そしてこの競争力については、次の4つの要素で判断するとしました。
第1の要素:シルバーレイクがその市場にマッチしているか
第2の要素:適切なシルバーレイク用アプリケーションを投入できるか
第3の要素:マーケットを攻略するためのチャネルを有しているか
第4の要素:サービス・サポートを提供するためのインフラをもっているか
このようにAS/400の開発は方法論の整備から始まり、体系的かつ網羅的な戦略の下で進められていきました。そのことは製品の並行開発という当時としては異例の取り組みや、製品発表に先立つユーザー/ビジネス・パートナーからのフィードバックという画期的な手法にも表れています。
次回は、その並行開発や、「カスタマー・カウンシル」というユーザーからのヒアリングの取り組みなどに触れてみます。