株式会社大田花き ~IBM iのDBからダイレクトに取引先への帳票をFax/電子で自動送信

COMPANY PROFILE

本社 :東京都大田区
設立 :1989年
資本金:5億5150万円
売上高:249億626万円(2020年3月)
従業員数:188名(2020年3月) 
事業内容:花きおよびその加工品の受託販売および購入販売

http://www.otakaki.co.jp/

 

@TovasとUT/400-iPDCの利用でプリンティング環境の改革を推進

大田花きは、花きを取り扱う卸売会社として1989年に設立され、翌1990年、東京都中央卸売市場の大田市場花き部が開場するのと同時に、営業をスタートさせた。

現在の花き市場では、「機械セリ」と呼ばれるITを用いたセリが一般的である。花は少量多品種の商品を扱うため、取引の数が膨大になる。これを公正に、また鮮度が命の商品を迅速に消費者へ届けることが重要だが、それを可能にする自動セリシステムを業界に先駆けて初めて導入したのが、大田花きである。

同社での導入が、機械セリを全国へ普及させる端緒となり、セリの効率化や公平化に大きく貢献することになった。

自動セリシステムを導入したのは、営業を開始したのと同じ1990年。その後、2007年にはインターネットを利用した在宅セリを開始。さらに2012年には各席にPC端末を設置し、手元の画面ですべての情報を見ながら購入が可能になる最新の自動セリシステムにリプレースした。

設立当初から、こうした自動セリシステムの基盤として運用されてきたのがIBM iである。

同社は機械セリ以外にも、業務のさまざまな場面でITを積極的に活用し、事業成長の推進力としてきた。IBM iの基幹DBからダイレクトに、Faxや電子で帳票を自動送信するクラウドサービス「@Tovas」(コクヨS&T)の活用も、そうした姿勢を象徴する一例であろう。

同社ではセリが終了したあと、そこで決定した価格などを生産者へ通知する「仕切書」と呼ばれる帳票を、郵便やFaxでできるだけ速く送付する必要がある。そのため早い時期から1日2000枚に上る仕切書を、(株)ネクスウェイのFaxサービスを利用して自動送信してきた。

しかしリーマンショック後の2009年、会社全体で経費節減策が模索され始めたなかで、情報システム本部の平野俊雄本部長が注目したのは、Fax送信から電子配信への移行であった。

「郵便やFaxで送信している仕切書の一部でも電子配信へ移行できれば、郵送料金やFaxの通信費といったコストを削減が可能であると考えました」(平野氏)

平野 俊雄氏
情報システム本部
本部長 参事

ネクスウェイのサービスにはメール送信機能がサポートされていなかったため、IBM iからダイレクトに電子ファイル送信のできるサービスを調査し、導入を決めたのが「@Tovas」だった。

「当初はこれまでお世話になったネクスウェイに、不義理をしてしまうと悩みました。しかし2009年末までに両者のサービスが統合される予定であると知らされたので、@Tovasを採用することに決めました」(平野氏)

「@Tovas」のサービスを利用すると同時に、「UT/400-iPDC」および「@Tovas連携オプション」(アイエステクノポート)を採用した。

「UT/400-iPDC」はIBM iのスプールデータを利用して、専用オーバーレイによる表現力の高いグラフィカルなPDFファイルを作成するツールである。

これにより生成されたPDFファイルを、「@Tovas連携オプション」経由でクラウドサービスへ転送し、電子もしくはFaxで、取引先へ自動送信する仕組みである。

「@Tovas」の採用を決定したあと、同社では数カ月をかけ、「UT/400-iPDC」のオーバーレイ機能を利用して帳票の再設計に着手した。

「以前はネクスウェイ側に用意したオーバーレイを利用していたため、帳票デザインの自由な変更が難しかったのです。そこで@Tovasへの移行を機に、UT/400-iPDCを利用して、新たな要件を取り入れながら、今までの帳票を刷新することになりました」(平野氏)

そしてネクスウェイとの統合が完了した2010年3月から、「@Tovas」による自動送信がスタートした。

IBM iのスプールからPDFを生成し
社内のプリンティング環境を改善

運用開始から約7年が経過した今、送信する帳票は仕切書だけでなく、生産者に向けた発注書や、顧客に向けた注文受書など広範囲に拡大している。送信枚数は1日当たり3000枚。郵送での送付は大きく減少したというが、まだ80%近くがFax、残りの20%が電子送信である。

「電子送信かFaxか、どちらで送信するかをフラグ一つで切り替えられるので、@Tovasの運用はとても便利です。ただ電子送信への移行は当初予想していたよりも、ゆっくりと進んでいる印象ですね。やはり生産者の方々の多くがFaxでの受信に慣れているのに加え、電子送信の場合は通知メールが個人に届くので、メールの送信先である担当者が休んだりすると、すぐに内容を確認できないといった状況も生じます。それでも普段からの訴求努力が奏功して、少しずつですがFaxから電子送信への移行が増えています」(平野氏)

一方、「UT/400-iPDC」の導入により、社内プリンティング環境の改革も進んでいる。

PDFを生成することで、カット紙への移行が可能になり、専用帳票を廃止した。富士ゼロックスのオフィス複合機を4台導入したのに伴い、それまで設置していた5台のラインプリンタを段階的に撤去。今年春には、最後の1台が姿を消したという。

また感熱紙を用いるタイプのFax機器がオフィスのあちこちに6台以上導入されていたが、これらもオフィス複合機への統合に伴い、撤去が完了したという。

さらにオフィス複合機の機能を活用して、受信した帳票を紙に印刷せず、PDFで保管するペーパレス化の取り組みも進んでいる。今年11月には、Fax受信は完全ペーパレス化が実現する予定だ。

「@Tovas」と「UT/400-iPDC」の利用を契機に、その後はプリンタ環境のオープン化やペーパレス化が大きく進展したようだ。今後はオンプレミスで運用するIBM iと、「@Tovas」を筆頭とするクラウドサービスの棲み分けを明確化し、利用が可能な業務については積極的にクラウドサービスを採用していく方針のようだ。

[i Magazine 2016 Winter(2016年11月)掲載]

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